
ストレスチェック後の面談はなぜ重要?目的、実施の流れ、注意点を解説

目次
ストレスチェック、実施して終わっていませんか?
年に一度、形式的に実施して「結果を配布して終了」。そんな企業が少なくありません。しかし――本当に大切なのは、その“あと”です。
高ストレスと判定された従業員が、いまも黙って我慢して働き続けているとしたら?
そのまま放置すれば、突然の休職・退職・労災申請に発展する可能性もあります。
こうしたリスクを未然に防ぎ、従業員の心のSOSにいち早く気づく手段。それが「ストレスチェック後の面談」です。
実はこの面談、実施している企業とそうでない企業では、職場の健全性や定着率に大きな差が出ることが分かっています。
にもかかわらず、「本人が希望しないから」「産業医の時間がないから」と形骸化してしまう現実があります。
面談は、単なるフォローの場ではありません。
・従業員の“本音”に耳を傾ける機会
・数値では見えない“組織課題”を発見する手段
・リスクを低減し、生産性を高める“経営的ツール”
本記事では、「ストレスチェック面談」の本当の目的、制度設計の考え方、実践時の注意点をわかりやすく解説します。
従業員を守りながら、企業としても損をしない――そんな仕組みづくりのヒントを、ぜひお持ち帰りください。
第1章:なぜストレスチェック後の面談が重要なのか
「ストレスチェックは義務だけど、面談は希望制だから……」
多くの企業がこの認識にとどまり、面談の実施率は決して高くありません。ですが、実施しないことで企業が見過ごしているリスクや機会は想像以上に大きいのです。
まず、厚生労働省の指針では、高ストレス者が希望すれば医師による面接指導を受けられるようにする義務があります。
つまり、本人が希望しない限り企業に“面談の実施義務”はないとされています。
しかし、実務ではこの制度設計が大きな落とし穴になっています。
◆実施企業では組織改善につながる例も
ストレスチェック後の面談を継続的に実施している企業では、
- 面談を通じて従業員の不調の“初期サイン”を把握し、早期対応につなげた事例
- 部署ごとの共通課題を抽出し、業務配分やマネジメント体制の見直しを行った例
- 面談の積み重ねにより「相談してもいい雰囲気」が社内に浸透し、風通しが良くなったという声
といったように、単なる健康管理を超えた組織改善の契機として活用されるケースが少なくありません。
高ストレス者が面談を希望しない理由には、以下のような背景があります。
- 面談を受けると「問題のある社員」と思われそう
- 面談内容が上司に伝わるのではと不安
- 忙しくて時間を割く余裕がない
つまり、「希望しない」という意思表示が、そのまま「支援が不要」という意味ではないということ。
企業側がこの“沈黙”を真に受けて放置すれば、重大な見落としにつながりかねません。
◆企業にとっての3つのメリット
面談を制度化・実施することで、企業には次のようなメリットが生まれます。
- メンタル不調者の早期発見・対応
→ 突発的な休職・退職を未然に防ぎ、職場の安定を維持 - 部署ごとの“見えない課題”の可視化
→ 例えば「業務量が偏っている」「上司の対応が原因で離職が相次いでいる」などの兆候を掴むヒントに - 法的リスクの抑制とコンプライアンス強化
→ 面談を通じて適切に対応していたことが、後の労災申請や訴訟時に企業の防衛線になる
◆実施企業では組織改善につながる例も
ストレスチェック後の面談を継続的に実施している企業では、
- 面談を通じて従業員の不調の“初期サイン”を把握し、早期対応につなげた事例
- 部署ごとの共通課題を抽出し、業務配分やマネジメント体制の見直しを行った例
- 面談の積み重ねにより「相談してもいい雰囲気」が社内に浸透し、風通しが良くなったという声
といったように、単なる健康管理を超えた組織改善の契機として活用されるケースが少なくありません。
第2章:企業が知っておきたい制度設計のポイント
ストレスチェック後の面談を「実施するかどうか」は、単に従業員任せにすべきではありません。
重要なのは、企業側が面談の“制度設計”に主体的に関わることです。ここを曖昧にしたままだと、せっかくのチェック結果も活かされず、制度そのものが形骸化してしまいます。
ポイント①:対象者の設定は「高ストレス者+希望者」
労働安全衛生法では、「高ストレス者が希望すれば面接指導を受けられるようにすること」が義務付けられています。
しかし、実際には本人が申し出るハードルは高く、放置されてしまうことが少なくありません。
そのため企業としては、
- 高ストレス者には“面談を強く推奨する”仕組み
- 自発的に希望する人が申し出やすい仕掛け
この2つを組み合わせ、より多くの“声”を拾い上げる仕組みにすることが重要です。
ポイント②:面談依頼時の伝え方で、参加率が変わる
面談希望率を高めるためには、どのように案内するかが鍵を握ります。
「面談=あなたに問題があるということではない」
「困っていることがあれば、安心して話せる場として活用してほしい」
このようなメッセージを添えて案内することで、心理的ハードルを下げることができます。
また、案内方法も改善ポイントの一つです。紙の通知だけでなく、社内ポータルやメール、上司からの声かけなど複数のチャネルでアプローチすることで認知度と信頼感が高まります。
ポイント③:面談実施者は“社内”に限らなくてよい
面談の実施者としては、
- 産業医
- 保健師や臨床心理士(社内外)
- 人事担当者(ただし対応範囲に限界あり)
といった候補が考えられます。
すべての企業に産業医が常駐しているわけではありません。社外の専門機関に委託することで、コストを抑えつつ専門性の高い対応が可能になります。特に中小企業にとっては現実的な選択肢です。
さらに、産業医への報告内容・連携方法も制度設計の一部です。「面談→報告→対応」という一連の流れをあらかじめ整理しておくことで、後手に回ることを防げます。
第3章:ストレスチェック結果から面談へつなげるために必要な工夫
ストレスチェック後の面談は制度として設計しても、「実際に面談が行われない」という壁に多くの企業が直面します。
その最大の要因は、高ストレス者が“面談を希望しない”という現実です。
実際、多くの従業員は“面談を受けること”に対して不安や抵抗を感じています。制度があっても、本人が申し出なければ始まらない――ここに制度設計と運用のギャップがあります。
希望しない本当の理由は「不信感」と「誤解」
従業員が面談を希望しない理由としては、次のような心理的ハードルが挙げられます。
- 面談を受けると「メンタルが弱い人」と思われそう
- 上司や人事に内容が筒抜けになるのではという不安
- 業務が忙しく、時間を取るのが面倒
- 過去に相談しても何も変わらなかったという諦め
このような不安を取り除くには、「面談を受けても不利益がない」「きちんと守秘義務がある」「改善につながる可能性がある」と具体的に伝えることが重要です。
面談希望率を高めるための3つの実践例
- 案内文の見直し
形式的な通知ではなく、安心感と利用メリットが伝わる文言を使う。
例:「困っていることがあれば、小さなことでも安心してご相談ください。記録は第三者に共有されません」 - 選択肢の提示
面談相手を選べるようにすることで心理的ハードルを下げる。
(例:産業医/外部カウンセラー/女性スタッフなどから選択) - “相談しやすい文化”を育てる仕組み
上司が率先して相談機関を利用する・社内研修でメンタルヘルスへの理解を促すといった「心理的安全性のある職場づくり」も長期的には不可欠です。
チェック→案内→面談の流れを仕組みに
また、面談希望者が出た後の「スムーズなフロー」も重要です。
- フォームやシステムを通じた申し出受付
- 面談日時の自動調整ツール
- 面談後の対応内容のフィードバック体制
などを整えておくことで、本人の負担を最小限にしつつ、制度としての信頼性も高まります。
第4章:面談を“意味あるもの”にするための運用と活用
ストレスチェック後に面談を実施しても、「話を聞くだけで終わる」「結局、何も変わらない」といった状態では、従業員の信頼を失ってしまいます。
面談は単なる“対応”ではなく、職場環境を改善するための情報資源です。つまり、“意味ある面談”にするには、運用方法とその後の活用が鍵となります。
面談は“対話”であると同時に“データ収集”でもある
高ストレス者との面談では、本人の状態を把握するだけでなく、職場の構造的な問題や人間関係の兆候を拾うことができます。
例えば以下のような内容です:
- 業務量が過多で、日々の残業が常態化している
- 上司の指導スタイルが過剰で、精神的負担になっている
- 新人育成や教育体制に問題があり、孤立感を抱えている
こうした声は、ストレスチェックの数値だけでは見えてこない“職場のリアル”です。
そのため、面談後の記録は「個人の対応履歴」にとどめず、傾向分析に活用できる形で集約することが求められます。
フィードバックと改善策の流れを明確に
収集した内容をもとに改善を図るには、PDCA(計画→実行→評価→改善)サイクルの視点が欠かせません。
- Plan(計画)
面談で得られた課題を整理し、必要に応じて部署単位の対応方針を検討 - Do(実行)
業務量の調整、配置転換、管理職への指導強化など、具体的な改善アクションを実施 - Check(評価)
改善後、同様の声が減ったか、ストレスチェック結果に変化があるかを確認 - Act(改善)
効果が乏しい場合は施策の再検討。継続的な改善のループを回す
このプロセスを社内で回すためには、産業医・人事・経営層の情報連携体制を確保しておくことも不可欠です。
注意すべき“活用時の落とし穴”
面談情報を活かすうえで、次のような対応は絶対に避けるべきです。
- 面談内容を上司にそのまま伝える(守秘義務違反)
- 面談記録を人事評価に使う
- 面談結果をもとに従業員を責める・査定に利用する
これらは従業員の不信感を高め、面談制度そのものを形骸化させてしまいます。
活用する際は、「個人特定を防ぐ形で傾向を把握し、組織課題として対応する」というスタンスを徹底することが大切です。
まとめ:面談は“やるべき理由”がある。制度の見直しが企業の未来を変える
ストレスチェックの結果を活かせるかどうか――
それは「面談」をどう運用するかにかかっています。
本記事で見てきたように、面談には次のような役割があります。
- 従業員のメンタル不調を早期に察知し、離職や休職を防ぐ
- 数値では捉えきれない“現場の声”を拾い上げ、組織改善のヒントにする
- 面談対応の記録を残すことで、企業としてのリスクマネジメントを果たす
一方で、制度設計が不十分だったり、面談の目的が伝わっていなかったりすると、「誰も希望しない」「実施しても変わらない」という結果になりかねません。
だからこそ今、企業として見直すべきなのは「面談をやるかどうか」ではなく、“面談を機能させる仕組みがあるか”という点です。
- 面談対象者の選定基準
- 面談を希望しやすい環境整備
- 実施後のフィードバックと組織活用の仕組み
これらを整備することで、面談は従業員にとって「相談してよかった」、企業にとっては「改善につながる貴重な機会」となります。
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